05年 バンコクコンペ シルバーメダル受賞

TThe 11th Culinary Gathering of Cooks & Chefs 2005.9.15
フルーツ&ベジタブル・カービング・コンペティション参加報告

コンペティション作品全体像(制限時間3時間)

バンコクのクイーン・シリキット・コンベンションセンターで行われた、 フルーツ・ベジタブル・カービング・オン・ステージに、初めて参加しました。

この競技会は、タイで最も大きなフルーツ・ベジタブル・カービングの競技会のひとつで、高級ホテルの一流の技術を持つシェフや、 タイでカービングを勉強している学校の方々が、腕を競い合います。

私がこの競技会を初めて見に行ったのは、約6~7年前のことでした。どの作品も素晴らしく、圧倒されました。 当時は、まさか自分が参加できるようになるとは、思ってもみませんでした。制限時間は3時間、 直接会場でカービングの作品を作っていく様子を見たとき、まるで鉛筆でさらさらと文字を書くような速さでカットしていくので、 なんて速いのだろうと驚きました。それまで、そんなに速くカービングをしている人を見たことがありませんでした。 それからは、できるだけ毎年見に行くようにし、ずっと憧れてきた競技会ですが、でてみたいという欲求に駆られ、 無謀にも今年、挑戦することに決めました。

競技が行われる部屋は、とても広く、カービングの競技会場は、ギャラリーが入らないようにポールで囲われていました。 私の後ろにちょうどポールが置かれていて、背後にギャラリーの気配を感じながら、カービングをしました。 始まって5分くらい経ったとき、一瞬緊張しかけたのですが、ここで緊張すると、手が震えてカービングができなくなるので、 なるべくギャラリーのことは気にしないようにしようと思いました。


競技は8時55分に始まりました。12時までの約3時間でカービングをしますが、競技が始まる前に、 ディスプレイ用のセッティングを終えます。作品の大きさの規定は、90cm×120cm×高さ120cmです。 3つ以上の異なる種類の野菜や果物を彫るということ以外は、特にテーマもなく、細かい指示はありませんが、 あらかじめ野菜や果物に手を加えてはいけません。

まずは、後ろ側のアイアンの花台に置く、4つのフルーツの丸彫り(スイカなどの素材の表面に模様を彫っていくこと)と、 前の下側に置くパパイヤの丸彫りを作ります。

バラのスイカ

【写真】バラのスイカ

最初は、バラのモチーフのスイカから始めました。スイカの皮が少し硬く、 予想していた所要時間25分より3分ほど長くかかってしまいました。後の作品のどこかで時間を短縮しないといけません。

次は、黄色いカンタループ・メロンで、1輪の蘭のモチーフです。このデザインは、花びらの数が少ないので、 がんばれば作業時間を縮められる可能性がありました。ここでなるべく速く彫るように心掛けました。 皮がちょうど良い柔らかさで、予定は15分でしたが、13分で仕上がりました。

先の尖った花びらのスイカ

【写真】先の尖った花びらのスイカ

次は2つ目のスイカ。細かい目の花びらで、花びらの先が細長く、斜めに流れているデザインです。 これは18分の予定でしたが、この作品から、具体的な時間をチェックしなくなったので、実際は何分でできたかわかりません。 最終的には、予定していた作品数を作ることができたので、想定していた時間とほぼ同じくらいの時間で作れたと思います。

4個目は、グリーンのハニデュー・メロン。2輪の蘭のモチーフです。このメロンに関しては、最後まで本番でやろうかどうか迷っていました。 細かいデザインではないので、約15分の予定でした。他の素材が硬かったり、この後、何か順調に運ばないことが起きた時は、 この作品を省きたかったのです。しかし、せっかく練習したので作ってみることにしました。

熟れたパパイヤの丸彫り

【写真】熟れたパパイヤの丸彫り

5個目はパパイヤの丸彫り。今回、素材について一番心配していたのは、パパイヤの熟れ具合でした。本番前には、 いつも熟れた柔らかいものしか手に入らなかったからです。心配していたとおり、よく熟れていて、気をつけなければ、 握りつぶしてしまいそうでした。切りやすいように左手で、素材をいろんな角度に回しながら彫るのですが、 回した時に細工をつぶさないよう気をつけました。かなり熟れていた為、ギザギザをカットしても、角がシャープにでませんでした。 予定時間は25分。柔らかいので、ナイフは進みましたが、取り扱いに気を配らなければならなかったので、予定通りの時間がかかったと思います。 崩れないように、そっとディスプレイの場所に置きました。


前のアレンジ(両端)

【写真】前のアレンジ(両端)/黄緑の花:若いパパイヤ/赤:ビーツ/白:大根/黄緑:ヒメリンゴ

次は、前側の3つの花器に飾るカービングです。3つは全て同じものにする予定で、一つの花器に、 パパイヤの花1個、大根のバラ1個、ビーツ(赤い丸大根)のバラ2個をそれぞれに飾ります。 ここでもパパイヤの熟れ具合が心配でした。パパイヤの頭の方を8cm程の長さにカットして使うのですが、一つ目のパパイヤを切った時、 中身が黄色だったので、まだ若い方だと思いました。予定時間は1個12分。ナイフを入れると、皮の部分は柔らかくて切りやすかったのですが、 内側が柔らかすぎて、先の尖った花びらを作ると、自然に折れてしまいました。花を半分作ってしまっているので、6分は経っているはず。 ここでやり直したくない。なんとか許せる範囲なので、作業を続けて仕上げました。

残りのパパイヤをカットすると、内側は赤くてかなり熟れている様子。指で果肉を押してみると、ぐにゅっと入ってしまいました。 とりあえずもう一つ、半分まで彫ったのですが、1個目のパパイヤよりも花びらが激しく折れてしまったので、諦めました。 私にとっては、大きな時間のロスとなりました。もったいないのですが、立派なパパイヤを4本捨てました。ほどよく熟れたパパイヤは、 内側が赤いオレンジから黄色のグラデーションが美しく、作品を飾ったときに華やかな印象になります。しかし、用意してきたパパイヤは、 熟れて柔らかすぎて、使えません。予備で持ってきた、熟れていないグリーンのパパイヤを使うことにしました。

グリーンのパパイヤは、タイで最も硬い野菜のひとつと言われていて、熟れたパパイヤを彫るより、時間が長くかかります。 「ここが一番のがんばり時!」と思い、気合いを入れました。なんとか彫り上げることができましたが、気になったのは時間です。 その後、水に浸しながら優しく花びらを外側に折っていくと、大きく開いて豪華な花になりますが、開いている余裕はありませんでした。 競技が終わった後、開けなかった花を見て、一番後悔することになりました。

その次に、大根のバラとビーツのバラ。これは、通常使っているナイフではなく、少し大振りなナイフを使います。1個3分の予定です。 大根は、暑いタイでは痛みやすい素材で、2日前に買ったので心配していましたが、とてもコンディションが良く、スムーズに作ることができました

とうとう最後のビーツです。この頃には、ジャッジが「あと30分。」とか「あと15分。」などとカウントダウンし始めたので、急がないといけません。

「あと5分。」と言われたときは、最後のバラを作っている最中でした。「あと5分かもしれないけれど、1個3分で出来るはず。やらなければ!」 と思いました。そのとき、「このビーツ硬いな。途中でやめて他のビーツに変えようかな?」と思ったのですが、続けることにしました。 が、なんと、そこでナイフの刃が柄から取れてしまったのです!「どうしよう?最後の1個なのに!この種類のナイフは1本しか持っていない。 諦めようか?」と一瞬思いました。しかし、「ここで諦めてはいけない。なんとか仕上げるんだ!」と気を取り直し、瞬間接着剤を用意していたので、 付けてみましたが、焦ってしまって付きません。このナイフを諦め、通常使っているナイフでなんとか仕上げました。しかし、立体的には彫れず、 表面にラインを入れる程度の浅い仕上がりになりました。

出来た花をワイヤーに刺し、バランスを見る余裕もなく、とりあえず花器に挿して、カービングの作業は終わりました。このアレンジも、 後で見るとバランスが悪く、また、最後のバラを前のよく見えるところに飾ってしまったことなど、後悔しました。

その後、散らかした机を片付けなければならないのですが、時間がなく、下に置いてあったダンボール箱に、作品以外の全てのものを流し落とし、 霧吹きで最後に霧をかけているときに、終了となりました。

結果、シルバーメダルを頂きました。私にとっては、とても良い経験になりました。

タイでは、C先生、S先生、友人のMさん、Sさん、ガイドのTさん、大変お世話になりました。ありがとうございました。 また、カービング教室ブルーの森田さん、Carving Studio Sの信乃さんには、それぞれ、「ひとりだったら、自分の作品と写真を撮ってないでしょう? 撮って上げましょう。」と言ってくださいました。とても感謝しています。Luxe Carvingの時田さんにも、後日写真を送っていただき、お世話になりました。 最後に、私の一番の先生、トゥクタ・B・ロング先生に感謝したいと思います。